- 「報酬は子どものやる気を下げる」が誤解だということ
- 報酬がやる気を下げる時の4つの条件
- やる気を高める報酬の与え方

「飴と鞭」という言葉があるように、教育には「報酬や罰」が付きものです。
最近では「報酬を与えると子どもの純粋なやる気を削いでしまうかも!」という情報もありますよね。
結論をいうと報酬が子どものやる気を下げてしまう場面はかなり限られているので心配する必要はありません。
今回は論文「報酬は内発的動機付けを低めるのか[PDF]」で示されている報酬がやる気を下げる原理と正しい報酬の与え方について解説します。

目次
報酬はやる気を下げるのか?
報酬の議論の前に”やる気”について基本的なことを確認します。
内発的動機付け・外発的動機付け
教育心理学では「内発的動機付け」「外発的動機付け」という用語が登場します。
「動機付け」はカンタンにいってしまえば「やる気」のことです。
- 内発的動機付け……本人の知的好奇心や興味・関心、有能感などの内側から生じるやる気
- 外発的動機付け……賞罰や競争などの外部の影響で生じるやる気
内発的動機付けの例は「勉強が楽しい!」が、
外発的動機付けの例は「先生に褒められたい!」が挙げられます。
内発的動機付けはやる気の絶対量が大きいことから、重要度は「外発的<内発的」です。
そのため教育に当たっては「いかに内発的動機付けを引き出すか?」が課題となります。
アンダーマイニング効果
「動機付け」を語る際に外せないのが「アンダーマイニング効果」。
「アンダーマイニング効果」を提唱したのは動機付け研究で有名なデシ(Deci)という方です。
内発的動機付けによる行動
↓(報酬を与えるようにする)↓
(報酬を欲しがり)外発的動機付けによる行動
たとえば元々勉強が好きな子に対して、「次のテストで90点とったらゲームを買ってあげる」と約束し、それが成立した場合、子どもが元々もっていた純粋なやる気が消滅してしまうということです。
この研究結果によって世間では「報酬を与えると子どものやる気が削がれるのでは?」といった意見が出回っています。
しかしデシは「アンダーマイニング効果」が生じるのには4つの条件が存在すると発表しています。
報酬がやる気を下げる4つの条件
アンダーマイニング効果によって、報酬が子どものやる気を下げてしまう場合の4つの条件はこちらです。
- あらかじめ報酬が予告されている
- 行動量や結果に伴って報酬の量が決定される
- 報酬の有無に関わらず、面白さを感じている
- 報酬が物的である
これら4つの条件がすべて満たされた場合のみ、アンダーマイニング効果は起きるようです。
したがって報酬によって子どものやる気を高めることは可能というわけですね。
やる気を高める報酬の与え方
報酬を用いて子どものやる気を高めるためには、先ほどの4つの条件を満たさないようにしなければなりません。
とはいえ意識することが多いと手間がかかるので、重要な部分だけをまとめました。
やる気を高める報酬の与え方は次の2ステップにわかれます。
- 報酬をきっかけに興味をもたせる
- 物的報酬から言語的報酬へ
①報酬をきっかけに興味をもたせる
1つ目のステップは子どもがその活動(勉強など)に興味をもっていない場合、報酬をきっかけとして興味をもたせることです。
子どもが活動に興味をもっていない場合は「報酬がやる気を下げる4つの条件」の③の条件を満たしていません。
そのため物的報酬(お小遣いなど)も利用することが可能ですね。
初めは報酬をエサに子どもの活動を誘発し、好奇心や興味が湧いてきた段階で次のステップへと移るのがよいです。
報酬をきっかけとして内なるやる気を引き出して、子どもの活動幅を広げる手助けをしてあげましょう。
②物的報酬から言語的報酬へ
2つ目のステップは子どものやる気が出てきた段階で、物的報酬を言語的報酬へと変えることです。
お小遣いなどの物的報酬が許容されるのは、子どもが興味を持っていない場合でした。
子どもが興味を持ち始めたら物的報酬はやめて、言語的報酬へと変えましょう。
「言語的報酬」とは、「褒めること」です。
「しっかり勉強してて自慢の子だわ!」と褒めてあげることが、子どもには1番のやる気になります。
褒め方のコツは「行動」ではなく「人格」を褒めることです。
- 「あなたは素晴らしい」:人格
- 「あなたの考えは素晴らしい」:信念
- 「あなたの技術は素晴らしい」:能力
- 「あなたの行動は素晴らしい」:行動
上にいくほど心に響く感じがしませんか?
「こんなに勉強して偉いわ!」と行動を褒めるのではなく、人格を褒めるのがベストです。
やる気を高める報酬の与え方:まとめ
- 報酬をきっかけに興味をもたせる
- 物的報酬から言語的報酬へ
子どものやる気を引き出すためには「内発的動機付け」と「外発的動機付け」の両方をうまく活用しなければなりません。
報酬とやる気の関係を意識して、バランスよく子どもをサポートしてあげましょう。