- 「リカレント教育」ってなに?
- 日本におけるリカレント教育
- リカレント教育の課題

突然ですが、「リカレント教育」って知ってますか?
「リカレント教育」とは、カンタンにいってしまえば、「社会全体で学び直しをサポートする教育システム」です。
「リカレント教育」は社会の変化に対応するための概念として研究が進められています。

今回は、リカレント教育の基本情報と日本におけるリカレント教育について解説します。
目次
「リカレント教育」って何?
冒頭で「リカレント教育」のことを「社会全体で学び直しをサポートする教育システム」と説明しました。
ここからはさらに詳しく説明しますね!
学び直しのシステム
リカレント教育の定義はこちら!
「すべての人に対する、義務教育または基礎教育終了後の教育に関する総合的戦略であり、その本質的特徴は、個人の生涯にわたって教育を交互に行うというやり方、すなわち他の諸活動と交互に、特に労働と、しかしまたレジャー及び隠退生活とも交互に教育を行うことにある。」
リカレント教育 – Jinkawiki
このままだと難しいのでまとめ直しました!
- 生涯に渡って好きなときに(大学などで)再教育を受けられる体制
- 「→教育→諸活動→教育→諸活動→」の流れを作る
「リカレント(recurrent)」には「回帰、周期的」といった意味があります。
必要に応じて周期的に教育を受ける、またそれを可能にする社会システムのことを「リカレント教育」と呼ぶんです。
リカレント教育の背景
リカレント教育の歴史はこちら。
- スウェーデンの経済学者ゴスタ・レーンが提唱
- 1968年、ヨーロッパ文相会議で注目される
- 1970年、OECDが教育政策会議で取り上げる
- 1973年、OECDの報告書「リカレント教育一生涯学習のための戦略-」が文部省により公表され、呼称が定着
リカレント教育が重要視されたのには理由があります。
文部科学省の公式サイトによると、
従来,教育の普及・充実は,青少年を主たる対象とした教育制度の延長として行われてきたが,このことは,青少年の社会参加を遅らせ,社会への貢献の機会を少なくするというおそれのあること,急激な社会変動に伴う新たな知識,技術の習得が求められることに対して,人生初期の教育だけで対処することは困難であること,労働経験・社会経験を積むことにより学習動機が生じ,この場合は青少年期における教育よりも学習の効率が高いということ等である。
OECDのリカント教育 – 文部科学省
これも難しいのでまとめると
- 教育期間が延びると、青少年の社会参加が遅れる
- 教育を人生初期にまとめると、社会変化に対応できない
- 社会に出てから学習意欲が湧くかも
経済や文化の成長は加速度的に速くなっています。
「スマートフォンの普及」の普及は良い例ですよね。
世帯におけるスマホの普及率は2010年の9.7%に対して、
5年後の2015年には72.0%となっています。
スマホの爆発的な普及は実感としてもあるんじゃないでしょうか?
さらにこれからは、次世代通信システム「5G」によって、車の自動運転や遠隔医療が実現されるといわれていますよね。
このように社会や技術の変化に対応するために、「社会人も教育を受けられるようにしよう!」というのがリカレント教育なんです!

日本におけるリカレント教育
日本においても学び直しの必要性が叫ばれています。
「リカレント教育」は「人づくり革命 基本思想」の中で言及されました。
「人づくり革命 基本構想」
「人づくり革命 基本思想 [PDF]」 は、2018年6月13日に行われた「第9回人生100年時代構想会議」で取りまとめられました。
「人づくり革命」の主な内容はこちら。
- 幼児教育の無償化
- 子育て安心プラン
- 大学などの高等教育無償化
- 介護人材の確保
- 私立高校の授業料無償化
- リカレント教育の拡充
- 大学改革
- 高齢者へ働く場の提供
第六に、より長いスパンで個々人の人生の再設計が可能となる社会を実現するため、何歳になっても学び直し、職場復帰、転職が可能となるリカレント教育を抜本的に拡充する。
「人づくり革命 基本思想 [PDF]」 第1章より引用
少子高齢化が深刻な日本では、「何歳になっても職場復帰ができる社会」を構築するために、リカレント教育の拡充が必要とされているんです。
学び直しの支援制度

リカレント教育実現の問題
リカレント教育が知られる前の日本では「終身雇用」が一般的で、社会人を教育する役目は企業が担っていました。
しかし、1つの会社に身をうずめる時代は変わりつつあります。
そのため、現代ではリカレント教育を求める声が強まっているんです。
リカレント教育の実態
文部科学省の「社会人の大学等における学び直しの実態把握に関する調査研究(平成27年度)」によると、
「学び直し未経験の社会人(25~50歳)2000人」のうち、752人(37.6%)が「大学などでの学び直し」に興味ありと解答しています。
若年層のほうがより興味を示していることから、今後も学び直しへの関心は高まっていくと思われます。
また「現在大学などで(職業に必要な)学び直しを行っている社会人学生7484人」に対して学び直しの満足度を調査したところ、94.2%が「とても良い」「まあまあ良い」と解答しています。
このことから学び直しの満足度は非常に高いと言えますよね。
しかし、学び直しにはまだまだ課題もあります。
リカレント教育の課題
先ほどの「学び直し未経験の2000人」に対する調査では、学び直しを阻害する要因の2トップはこちらです。
- 費用が高過ぎる
- 勤務時間が長くて十分な時間がない
実際に、「学び直し中の7484人」に対する調査では、
- 84.3%が授業料を自己負担
- 69%がフルタイムで働いている
と解答しています。
リカレント教育システムを現実のものとするためには、社会人学生の給与や学び直し中の諸費用を負担する制度を整えていく必要があるんですね。
また「社会人の学び直しに関する現状等について(平成27年度)[PDF]」による「大学入学者のうち25歳以上の割合」は、OECD国の平均が約2割なのに対して、日本は1.9%でOECD中最下位の数値です。
このリカレント教育システムの課題を解決するためには、日本の常識を変えるような改革をしていく必要があるといえます。
リカレント教育が社会を変える:まとめ
- 費用の負担
- 仕事との両立
私が大学院生だった頃、定年退職をされた方と一緒に授業を受けたことがあります。
地域開放型の学会にも参加される方がいます。
これからの時代、学び直しは「職業訓練」や「趣味」として普及していくと確かに感じます。
あなたも学び直しを視野に入れた人生設計をしてみてはいかがでしょうか?